カノン
「……あのー…、
あたし やっぱり…、
今日はライブ、行きません。
…大事な用事、……思い出したから」
「…?」
「今日は観に行けないけど…
…応援してます!
頑張ってください!
…そ、それじゃっ」
早口に それだけ言うと、
戸惑い気味の表情の咲くんを置いて、そのまま何も買わずにコンビニを飛び出した。
…不思議と、そんなに未練は残っていなかった。
…あんなに、
咲くんの事、″好き″だったのに。
いつの間にか、
あたしの中で入れ替わっていたんだね……。
咲くんとは、全然 逆の人。
最初は、
冷たい視線や″話し掛けるなオーラ″が、怖かった。
でも2人きり に なると すごく優しくて……
″そっちが本当なのかも″って気が してから、怖い っていう気持ちは消え去って…。
引力に引っ張られるみたいに、
ぐいぐい引き込まれて……、
気付いたら、こんなにも……。
諦めようと思って、
実際 諦める為に咲くんに会ったのは良い きっかけ だったのに…、
いつの間にか、
気持ちは入れ替わっていた。