カノン
09
「………景さん」
「何……?」
「あのー…、あたし今ホテルの前に居まして…
チェックイン時間じゃないので、
とりあえず荷物だけ先に預かって貰おうかな、と 思ってるんですけど…」
「…うん」
「だから そのー…
…一旦、電話 切りたいんですが……」
「……あ、そっか。
ごめん ごめん、
…いいよー 笑」
「…すみません。
あ、でも……」
「…ん?」
「終わったら…
また、電話しても いいですか…??」
「…??
何、それ 笑
いいに決まってんでしょ 笑」
…メディアで見る″SIVAのヴォーカルの景さん″は、
一見 怖そうで、こういう お願いも一刀両断…と言うか、冷たく はね返しそうな…雰囲気を、持ってる。
時々そんな景さんを思い出して、
いつか どこかで"断られるんじゃないか"って不安になる けれど…
景さんは また すごく温かな雰囲気で、そう返してくれた。
「………」
「また電話、して。
…待ってる」
…柔らかい、空気。
SIVAのヴォーカルの景さんだと緊張するのに、
素の景さんには安心感を感じるし、側で その空気を感じると、
とても落ち着く。
…苦しいけれど、安心する。
なんて、
我ながら矛盾してる感覚だ。