カノン
09




「………景さん」




「何……?」






「あのー…、あたし今ホテルの前に居まして…


チェックイン時間じゃないので、

とりあえず荷物だけ先に預かって貰おうかな、と 思ってるんですけど…」




「…うん」






「だから そのー…

…一旦、電話 切りたいんですが……」




「……あ、そっか。


ごめん ごめん、

…いいよー 笑」






「…すみません。


あ、でも……」




「…ん?」






「終わったら…


また、電話しても いいですか…??」




「…??


何、それ 笑


いいに決まってんでしょ 笑」






…メディアで見る″SIVAのヴォーカルの景さん″は、

一見 怖そうで、こういう お願いも一刀両断…と言うか、冷たく はね返しそうな…雰囲気を、持ってる。


時々そんな景さんを思い出して、

いつか どこかで"断られるんじゃないか"って不安になる けれど…

景さんは また すごく温かな雰囲気で、そう返してくれた。






「………」




「また電話、して。




…待ってる」








…柔らかい、空気。


SIVAのヴォーカルの景さんだと緊張するのに、

素の景さんには安心感を感じるし、側で その空気を感じると、

とても落ち着く。




…苦しいけれど、安心する。


なんて、

我ながら矛盾してる感覚だ。





< 78 / 275 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop