カノン
「……つか、電話 繋がってんじゃん!笑
…もしもし、リアちゃん?」
景さんが女の人に笑いながら言って、次に あたしに向かって、そう言った。
「そうでした!?
すみません~」
…受話器の向こうで、
女の人の申し訳なさそうな声が…聴こえる。
よく考えたら…、
″すみません″とか″~でした″とか…
″彼女″なのに、この口調は おかしいかも。
…そう、無理矢理 希望を見出そうと したのだけれど……。
でも、だからと言って、彼女 以外に納得 出来る答えも、浮かばない。
それに、
旦那さんに敬語を遣う奥さんだって居るだろうし、
ファン上がりの彼女で、ファンだった時の癖が未だに抜けない…って事も あるかも しれないから、
やっぱり、この口調でも おかしくはない、のかな…。
―…うん。
やっぱり、彼女さん なんだ……―
色々 考えて、結局そういう結論に至って…、
心がズキズキと、痛んだ。
……一体あたしは、
景さんに、何を期待して いたんだろう……?
最初から、
″公表されてないだけで、彼女は居る″って、思ってた筈…なのに。
いつの間に……、
…期待しちゃってたんだろう…?
気付かないうちに勝手に期待して、
その所為で″心が痛い″なんて…
ほんと馬鹿、みたい。