カノン
「…………」
「…………」
「あ、あのー……」
景さんが ずっと黙っているから、
とりあえず声を出してみた。
″まだ怒ってるのかな?″って思ったから、
…すごく、恐る恐る。
でも景さんの反応は、あたしの思っていたの とは、違っていた。
「………あ、リアちゃん ごめんね。
あいつ…、
…うちのマネージャーが、勝手に電話して…」
それは さっきまでの冷たい声じゃない、
あたしの聞き慣れた、優しい声…だった。
…ほっ と した。
けれど……、
次に既視感と…″やっぱり″って、思った。
……景さんは やっぱり、
厳しい、冷たい自分を、"作っている"。
そして
既視感を覚えたのは…。
…あたしも"作っている"から。
やっぱり、
景さんとあたしは、"同じ"なんだと……
改めて思ってしまった。
そう きっと、
穏やかな景さんに惹かれた だけじゃ、ない…。
"同じ"だったから、
それに気付かなくても どんどん無意識に引っ張られるように、惹き付けられて いったのだ と。
改めて今、思ってしまった けれど…。
…でも、
こんな"同じだ"なんて言い切っちゃう痛い あたしを、景さんが受け止めてくれる っていう自信は……、
今回サナギさんと話した事で、また ほぼゼロに戻ってしまって…いた。