カノン
「……つか、そんな目しても渡さねーから 笑」
「……………いぢわる(小声)」
「は?
何?」
「な、何でもない ですぅ~…」
誤魔化すように そう言ったら、
親友は大袈裟な溜め息を吐いた。
「………ったく。
どいつも こいつも、リアには甘いから…。
どうせアタシが帰って来た時くらいしか、アンタを止める奴なんて、居ないんだろ?」
「………」
「他に止める奴、居る?
…居ねーだろ~。
みんな、アンタが超~嬉しそうな顔して食うから、
絶対ワンコ感覚で、何か あげたくなってる と 思う!
…アタシだってホントは餌あげたいけどさー(笑)、
でもリアの体の為に、
心を鬼にして止めてんだよ」
「う、うん…。
ありがとう…?」
「…そこ疑問形かよ 笑
…ま、いいけど。
とにかく今日は…
これ以上 甘い物 禁止、だから」
「……そ、そんなぁ~…」
ビシッと言われて、返す言葉が見つからない。
…いつから、かな…?
子供の頃は厳しかった親の支配が緩くなって、
最近では、特に食べ物に関しては本当に あたしを止める人が、居なくなった。
親友は″周りが甘やかし過ぎる″なんて、言うけれど…。
…そう言えば あたしが″刺青したい″って言った時も、
大反対したのは彼女だけ、だったなぁ…。
親も勿論 反対してたけれど、
″親から貰った体に墨 入れるなんて絶対 駄目″って…、
親と同じ理由で止めた他人は、彼女が初めてだった。
他の友達は みんな″いいじゃん″とか″可愛い″とか…
何より、″姫ちゃんが自分で決めた事だったら…″って、感じだった。
それは それで、あたしの意見を尊重してくれてるのかな って思うけれど、
彼女は あたしが嫌がる事でも あえて はっきり言う…、
昔から親みたいな…貴重な存在、だった。