花に、嵐
高嶺の、花
「──で、相談というのはなんでしょうか?」

美味しそうな桜餅にニコニコしていると、そう訊かれて、本来の目的を思い出した。

「は!そうだった!あのね…………って、ここで話すの?」

未だ、私たちはエントランスホールにいる。

朔ちゃんはホールをくるりと見回して、ファンを欺くためにかけ始めた伊達メガネを中指でクイッとかけ直すと、その奥にある黒目がちな瞳を細めた。

「──別に構わないでしょう。いまは誰もいませんし」

「え、でもほら…」

そう言いながらコンシェルジュに視線を向ければ

「彼らなら大丈夫です」

至極当然のような返答。

いや、わかってるよ。コンシェルジュは住民の秘密を漏らすようなマネはしないだろうってことはね。



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