花に、嵐
「………帰らない」

ふてくされ気味に呟き、朔ちゃんから目を逸らす。

視線の先には我関せずを貫いているのか、こっちには目もくれず、テレビを観て寛いでいる様子の旺司郎。

「花菜」

見なくてもわかる。

朔ちゃんはきっと呆れてる。またワガママ言ってって思ってる。

早く帰れって思ってる。


「帰らないったら帰らない!朔ちゃん相談に乗ってくれるって言ったじゃん!」

「だからそれはまた別の日にと言ってるでしょう。遅くなると先生が心配しますよ」

朔ちゃんは私のママのことを先生と呼ぶ。

もともとは、朔ちゃんのママさんがお華の稽古に通われてたんだけど、いつの間にか一緒に来ていた朔ちゃんも習い始めて、すっかりハマってしまったらしい。

今じゃママより有名になっちゃったし。

朔ちゃんが私に過保護になるのは、少なからず、師匠でもあるママの影響があると思う。













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