花に、嵐
それを聞いちゃうと、いま決心した思いも急速に萎えていった。

やっぱ、ダメかなあ。

重い溜め息を吐き出しながら、食べる気がなくなってしまった桜餅をお皿の上で弄ぶ。

「──花菜」

桜餅を爪楊枝でコロコロしていたら、朔ちゃんがお皿をスッと自分のほうに引き寄せて私の顔をジッと見つめる。


それだけで、頬にポッと熱がともる。

朔ちゃんが呼ぶ“花菜”っていうありきたりな名前が、ただ呼ばれただけで、ものすごく愛おしくなる。

「──私は、朔ちゃんが好きなんだよ。だから、したくない。お見合いなんか」

こんなにも好きなのに。

いつもどんなときも、この気持ちを伝えてきたけど。

「───まだ、そんなことを言ってるんですか」

───……どうしたって伝わらない。
















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