花に、嵐
重っくるしい溜め息とともに吐かれた呆れたような朔ちゃんの声。

「……花菜」

重なるように発せられた憐れむような旺司郎の声。

「ア、ハハ……」

傷ついた心を隠すように誤魔化すような渇いた笑いを零す。


だけど、煌めく夜景がどんどんぼやけていく。

グッと唇を噛みしめて俯いて。


「……妹って面倒だな」

ポツリ、呟いた。



────初めての告白は9才のとき。

朔ちゃんは大学生になったばかりだった。

“朔ちゃん!私、朔ちゃんのこと大好きなの!”

ずっと、本当のお兄ちゃんみたいで、もちろん大好きだったけど、それとは違うんだと唐突に自覚したおませな小学3年生だった私の告白。

“──僕も好きですよ、花菜のこと”

ニッコリ微笑んで、そう言ってくれたのに、次の日、知らない女の人を部屋に連れ込んで、キス、してるのを見てしまった。

あとで知ったことだけど、付き合って3ヶ月になる彼女だった。

──最初の失恋。

“なんだ、朔ちゃん彼女いたんだ”

悲しいくせに、笑ってた。







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