花に、嵐
駅から車で5分。

高級住宅街に建つ我が家は、築年数50年の純和風日本家屋。

先代家元、つまりは私たちの祖父が建てたのだけど、何度かリフォームを繰り返し、外見に反して内装はどちらかというと今風だったりする。

引き戸の玄関を開け、どこぞの高級旅館にありそうなほどの立派な中庭が眺められる廊下の、突き当たりにある白い引き戸の先には、つい数年前にリフォームしたばかりのアイランドキッチン。

そこから見渡せるリビングダイニングは壁はアイボリー。床はピンクベージュのフローリング。

吹き抜けで、30畳以上はあるだろう広さ。


住んでる本人の私は知らないのに、前に旺司郎がそんなことを言っていた気がする。



「ただいま帰りました」

美桜ちゃんがリビングのソファーにバッグを置きながらそう声をかけたのは、隣にある和室にいるママに。

ママは背中を向けて、なにか書類らしきものをを見ていた。

「おかえりなさい。あら、花菜も一緒だったの」

振り向いたママは私もいるのを見て、目を細めてほんの少し眉を上げた。


「ええ、偶然駅で会ったの。ね、花菜」

駅で偶然って。なに言ってんだか。

そう思いながらも敢えて反論はしない。

「まあね」

だって、朔ちゃんのところに行ってたって、今のママにばれるのは正直、面倒くさいし。

美桜ちゃんも告げ口するようなことはしない……はず。

……多分。













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