花に、嵐
「もうすぐ梨蘭(リラ)もパパも帰ってくるから久しぶりに家族揃ってのお夕飯ね」

梨蘭というのは、私より二つ上のもう一人のお姉ちゃん。

今は大学院で新種の薔薇の開発研究をしているけれど、それも来年の春には卒業して、某茶道家元の次男坊に嫁ぐ予定なのだ。

次男坊だから、家を継ぐわけではないみたいだけど、茶道に携わる仕事をしているため、梨蘭ちゃんは研究を他の研究者に託して、お婿さんを支えることに決めたみたいだった。

梨蘭ちゃんの夢だったはずなのに。

昔、パパのお母さん。私たちのお祖母ちゃんが端正込めて植えていた薔薇が大好きだった梨蘭ちゃん。

お祖母ちゃんに新しい薔薇を見せたいと言っていたのに。

一度目のお見合いであっさりと結婚を決めたのには驚いた。
梨蘭ちゃんにお見合いを勧めたママは大喜びで、そんなことがあったからか、次のターゲットを私に定めたみたいだった。



そのママは、嬉しそうにキッチンで食事の準備を始めている。

その隣で美桜ちゃんが手伝っている。

昔からそうだった。

美桜ちゃんは長女だからなのか、率先して忙しいママのお手伝いをしていた。

家事だけじゃなく、華道の仕事まで。

そして――――今や次期家元の地位にいる。

つい最近決まったこと。

お弟子さんたちの満場一致で。

まだまだママが現役から退くことはないけれど、様々な場所で次期家元として活動している。

美桜ちゃんは、朔ちゃんとの婚約解消数か月後、別の人との結婚を決めた。

今年の秋、結婚式を予定している。

相手は、高校時代の同級生で、お弟子さんでもある。

元婚約者も現婚約者もママのお弟子さん―――なかなか複雑。

と言っても、もともと朔ちゃんとの婚約は、公にはされていなかったから、身内以外は誰も知らないんだけど。










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