恋の駆け引き
食事が終わると、アウトレットの中を一通り歩いた。



遠藤は


「見たいお店があったら、好きに入っていいよ」


と言ったが、私は、好きに見ていいといわれても、遠藤が居るのに、ゆっくり買い物なんか出来ないと思った。



遠藤は、気になるお店を見つけると、何も言わずに、店に入って行き、自分の世界に入り、真剣に選んでいたが、その反面、私は、遠藤と見たいと思うお店はなく、遠藤に


「この店入らなくていいの?」


と聞かれても、入る気にならず、結局、私の意志では、一軒のお店も入らなかった。




 一通り周り終わると


「何処か見たい、お店あった?」


と聞かれた。



早く帰りたかった私は


「特になかったと答えた」


その結果、帰ろうかという事になったが、


「その前に一服していい?」


と言われ、しょうがなく私は


「はい」


と答えた。



遠藤が一服している間、私達は一言も会話しなかったし、お互い背中を向かい合わせていた。



私は、ヒールを履いていて、少し足が痛くなってきていたので、何処かに座りたかったが、一服しているところの近くには、座る場所はなく、ただ、タバコを吸い終わるのを待っていた。




タバコを吸い終わると、駐車場に向かって歩き出した。




行きよりも駐車場への道のりが、下りにもかかわらず、長く感じた。

< 19 / 28 >

この作品をシェア

pagetop