恋の駆け引き
河口湖に着くと、日が暮れかけていた。



遠藤がまた、一服したそうだったので、私はトイレに行った。



トイレは汚く、臭いも臭かったが、一人になるのに絶好の場所だった。



トイレの鏡の前で、思いっきりため息を尽きたかったのだ。



しかし、個室を出て、手を洗おうと鏡の前に立つと、鏡にタバコを吸っている遠藤の姿が見えた。



ということは、遠藤から私が手を洗う姿が見えるかもしれないのに、ため息なんかつけない、帰りたいなんか口に出せないと思い、しぶしぶ手だけを洗い、遠藤のところに行った。



そして、遠藤がタバコを吸い終わるまで、無言で待っていた。



この時、既に疲れはピークだった。
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