恋の駆け引き
帰りは、お互い疲れていたのか、行きよりも会話がなくなっていた。



虚しく、朝から何度もかかっているカセットだけが、響いていた。



その中、突然、遠藤が何の前ぶりもなくげっぷをした。



食事の後ならまだしも、何も口にしていないのに、げっぷをした遠藤に対し、嫌気というより、嫌悪感を感じた。



もう、この時から我慢の限界に達し、早く家に帰りたくてしょうがなくなった。



一分でも一秒でも、この人と一緒に居たくないと思ったのだ。



そんなことを私が感じていることなど、思ってもいない、遠藤は


「腹減ったから、ご飯食べて帰らない?腹すかない?」


と言ってきた。



この時「はい」と答えれば、会う前に考えていた、遠藤を本気にさせる事が、今までの態度と関係なく、遠藤は、私に対し本気になったかもしれないが、私は、この時点ではもうそんなことどうでもよくなっていた。



だから、遠藤のご飯の誘いを


「目が疲れて、だんだん頭痛くなってきたから、帰りたい」


と答えた。



一緒に遠藤とご飯なんてとんでもなく嫌なことになっていた。



きっと何を食べてもおいしくないと思えた。



諦めきれない遠藤は


「腹減ったな」


と私に聞こえるように、独り言を言っていたが、私はそれを無視したり


「ごめんなさい」


と謝ったりした。



 河口湖からの帰り道も、特に渋滞することもなく、一時間半ほどで、地元につくことができた。
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