叫びたいのは、大好きな君への想いだけ。



「私が記憶喪失?」


「そうだよ。頭を強く打ったようだからね」


「……信じられないんだけど」



みんなで病室に戻ると先生が相沢に記憶喪失のことを説明している最中だった。


俺たちに気づいた先生がにこやかに笑って頭を軽く下げる。


こちらも慌てて頭を下げた。



「ところで君は今何才かな?」


「……15さい」



相沢の答えに現実を見た気がした。
……本当に二年間の記憶が、ないんだ。


だって本当は相沢は17才だ。

4月18日生まれの高校2年生。


俺と出会った時にはもうすでに誕生日は過ぎていた。



「うん、君は今17才だよ」


「……冗談ですか?」


「冗談じゃないよ。これが証ね」



先生が相沢に渡したのは学校の生徒手帳だった。

疑心暗鬼でその手帳を手に取る彼女。



「金城高校……2年1組……」



相沢がつぶやくように言った。


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