叫びたいのは、大好きな君への想いだけ。
仕方ないから自転車を降りて歩くことにして、とぼとぼと当てもなく進む。
誰かに聞こう。
って、言っても誰もいねーけど…。
そして曲がり角を曲がった時だった。
ーードンッ!
女の子が俺のところに飛んで来たのは。
……え?
ーーガシャン!!
とっさに自転車を捨てて彼女の体を支える。
ふわり、優しい香りが鼻をかすめた。
スローモーションのように時間がゆっくり流れる。
倒れそうな彼女の背中を左手で、右手は彼女の頭を支えていた。
それはまるで、おとぎ話のお姫さまたちのダンスの決めポーズかのような。
涙目の女の子は自分の態勢を理解すると慌てたように俺から離れた。
「おい、てめぇ!!!」
奥から聞こえて来たその勢いのある言葉に女の子が肩をビクつかせる。
……ついでに俺も同時に。
もちろん、言ったのは俺じゃない。
彼女を突き飛ばしたであろう男。
こんなか弱い女の子を一方的に怒鳴りつける男に、なんとなくムッとした。
「人にぶつかっといて謝りもしねえーのか?あ?」