僕へ。
第一章 始まりのトキ
はじめの一歩
「ゆーう♪」
「おっはー♪えーっと?」
「あかりだってば!」
「そーだ!そーだ!あかりちゃん!」
「忘れないでよ~」
「ごめんごめん!」
高校生活始まって2週間。
特別新鮮な気もしなかった。
それより入学してからの毎日は辛いことばっかりでむしろ精神的に疲れていた。
「優はもぉ部活決めた?」
小学校から中学まではバレーをしていた。
好きっていうより認めてもらいたくて。
頭が悪い上にいくら勉強しても伸びないあたしにとってバレーは認めてもらうためのものだった。
あの人に認めてもらいたくて頑張ってたのがバカらしくなったのは中3の10月。
駅伝を始めてからだった。あたしが通っていた中学は全校53名の小さな学校。
夏休みは全員で10月の駅伝大会へ向けて練習をして、9月からは選抜チームでの練習が始まる。
他校にとってはありえないと思う。
でもみんな弱音を吐かず、サボりもせず
ただただ選抜に選ばれるためにひたすら走っていた。
----------
中学3年生9月
「優!あと1キロ!」
「はい!」
あと2週間で駅伝大会。
そんな時だった。
「痛ッ!」
右足首に歩けないほどの激痛が走った。
中1の時、右足首を捻挫して病院へ行かずにそのまま放置していた。
その古傷が今になって出た。
「優?走れるか?」
「走れます!痛ッ!」
痛くない。
大丈夫。
まだまだ走れる。
そう言い聞かせて立とうとしたあたしを大道先生は怒鳴った。
「無理すんなって!病院行ってこい」
「はい」
次の日の朝病院へ行った。
「いつから?」
「昨日です。」
「嘘だな。」
「中1です。」
「歩けなくなるよ?このままだと。」
「それでも構わない。」
「は?」
「先生。あたしね。走りたいの。走れるなら歩けなくなったっていい。」
「そんな・・・」
「それくらいの覚悟はある!」
1年生の時は怪我を理由に半分サボっていた。
その分体は楽でも心は罪悪感で一杯一杯で、それでも練習のキツさに心が負けてしまっていた。
2年生の時は頑張った分、慢心が出てきて倒れた。
それからは立ち直れなくなってしまった。
だから今年こそはってものすごく頑張った。
朝起きる時間と夜寝る時間は一定にして
お菓子はやめた
練習が休みの日にも自主練は欠かさなかった。
それは自分のためでもあったし、何より大道先生に認められたかったから。
あたしは知っていた。
一生懸命になれない人に対して大人は冷たいことを。
それは子供にとって一番辛いことを。
「今走ったら高校の部活は諦めろ。」
それでもいいさ。
別にバレーを続ける気もないし。
「よろしくお願いします」
深く先生に頭を下げた。
毎日朝から痛み止めの注射を打ってから練習に行くことになった。
そしてその日もそのまま学校へ向かった。
「どーやった?」
「大丈夫です。走れます!」
そう言って笑顔を向けた。
「優…」
「大道先生。あたし変わったでしょ?」
「ん?」
「いいの。あたしは走れたら。今を精一杯頑張りたいから。このチームで襷を繋がなきゃ。選抜されなかったみんなの足になりたいんだ」
「走れ。すべてを背負って。」
「はい!」
駅伝大会は一区として出場した。
ゴールしたときは自然と涙が出て、誰かのためじゃなく自分のために頑張れていたことに気づけた。
何かを精一杯頑張ること。
それだけで人は強くなり優しくなれる。
それを仲間と学べた3ヶ月。
人生で一番濃かった時間だった。
「ありがとう」
「え?」
「俺も成長したよ。優のおかげで。」
「あたしのおかげ?」
「俺の教えた生徒の中で一番根性があるよ!これからも頑張れな。」
「はい!」
「自分のために生きろよ。」
「ん?」
「もっと笑って生きろ!」
「はい!」
このとき大道先生に向けた笑顔が今までで一番いい笑顔だったと思う。
それ以来認めてもらうために頑張ってきた自分がバカらしくなった。
----------
「まだ決めてないかな。」
したいことがないわけではなかった。
小さい頃から高校野球が大好きで野球部のマネージャーに憧れていたりした。
高校受験が終わってからは野球の勉強をし、少しでも球児の負担を減らしていけるように頑張っていた。
しかし体験入部期間中にマネージャーの先輩ともめて諦めた。
逃げじゃなく、このまま続けたとして
野球を嫌いになってしまいそうな自分が怖かったからだ。
それからどこの部へも行っていない。
でもうちの学校は文武両道に力を入れた全員部活動制の学校。
ホントどうしよう。。。
「あかりちゃんは決めたの?」
「うちはバスケ!」
「バスケしてたの?」
「小学校の時ね♪だからまたしたいなって♪」
うん。
あたしこういう顔大好き。
自分の好きなことする前の楽しそうな笑顔。
「頑張ってね♪」
「うん!」
そんな会話をしている間に学校へ到着。
1年教室へ続く階段を上っているときあたしの運命を変えた人が現れた。
「優ちゃん…」
振り返ると栗色のくせっ毛をした男子生徒。
男にしては白すぎる肌と綺麗な顔立ちに思わず見とれてしまった。
でも誰だろう…
赤いスリッパってことは3年生?
「これ!」
渡されたのは入部届け。
しかもあたしの名前と部活名書いてるし…
「え?」
「男子バレー部のマネージャーやって!」
…えー!!!!
おいおいおい。
いきなり何を言ってるんだこの人は!
男バレ中学になかったし知り合いいないのに行くわけないじゃん!
無理!絶対無理!
「じゃあ今日の放課後体育館の前でねー♪」
そう言い残してその人は去ってしまった。
「イケメンさんだったね!」
いやいやいや、あかりちゃん。
そういう問題じゃないでしょ!
「行くの?」
「行かなきゃダメだよね?待ってるって言ってたし。」
「じゃあ一緒に行こう♪」
「うん!」
その日1日をどう過ごしたのかなんて覚えていない。
ドキドキして落ち着かない1日だった。
この日。
その人との出会いがあたしの人生を大きく変えた。
「おっはー♪えーっと?」
「あかりだってば!」
「そーだ!そーだ!あかりちゃん!」
「忘れないでよ~」
「ごめんごめん!」
高校生活始まって2週間。
特別新鮮な気もしなかった。
それより入学してからの毎日は辛いことばっかりでむしろ精神的に疲れていた。
「優はもぉ部活決めた?」
小学校から中学まではバレーをしていた。
好きっていうより認めてもらいたくて。
頭が悪い上にいくら勉強しても伸びないあたしにとってバレーは認めてもらうためのものだった。
あの人に認めてもらいたくて頑張ってたのがバカらしくなったのは中3の10月。
駅伝を始めてからだった。あたしが通っていた中学は全校53名の小さな学校。
夏休みは全員で10月の駅伝大会へ向けて練習をして、9月からは選抜チームでの練習が始まる。
他校にとってはありえないと思う。
でもみんな弱音を吐かず、サボりもせず
ただただ選抜に選ばれるためにひたすら走っていた。
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中学3年生9月
「優!あと1キロ!」
「はい!」
あと2週間で駅伝大会。
そんな時だった。
「痛ッ!」
右足首に歩けないほどの激痛が走った。
中1の時、右足首を捻挫して病院へ行かずにそのまま放置していた。
その古傷が今になって出た。
「優?走れるか?」
「走れます!痛ッ!」
痛くない。
大丈夫。
まだまだ走れる。
そう言い聞かせて立とうとしたあたしを大道先生は怒鳴った。
「無理すんなって!病院行ってこい」
「はい」
次の日の朝病院へ行った。
「いつから?」
「昨日です。」
「嘘だな。」
「中1です。」
「歩けなくなるよ?このままだと。」
「それでも構わない。」
「は?」
「先生。あたしね。走りたいの。走れるなら歩けなくなったっていい。」
「そんな・・・」
「それくらいの覚悟はある!」
1年生の時は怪我を理由に半分サボっていた。
その分体は楽でも心は罪悪感で一杯一杯で、それでも練習のキツさに心が負けてしまっていた。
2年生の時は頑張った分、慢心が出てきて倒れた。
それからは立ち直れなくなってしまった。
だから今年こそはってものすごく頑張った。
朝起きる時間と夜寝る時間は一定にして
お菓子はやめた
練習が休みの日にも自主練は欠かさなかった。
それは自分のためでもあったし、何より大道先生に認められたかったから。
あたしは知っていた。
一生懸命になれない人に対して大人は冷たいことを。
それは子供にとって一番辛いことを。
「今走ったら高校の部活は諦めろ。」
それでもいいさ。
別にバレーを続ける気もないし。
「よろしくお願いします」
深く先生に頭を下げた。
毎日朝から痛み止めの注射を打ってから練習に行くことになった。
そしてその日もそのまま学校へ向かった。
「どーやった?」
「大丈夫です。走れます!」
そう言って笑顔を向けた。
「優…」
「大道先生。あたし変わったでしょ?」
「ん?」
「いいの。あたしは走れたら。今を精一杯頑張りたいから。このチームで襷を繋がなきゃ。選抜されなかったみんなの足になりたいんだ」
「走れ。すべてを背負って。」
「はい!」
駅伝大会は一区として出場した。
ゴールしたときは自然と涙が出て、誰かのためじゃなく自分のために頑張れていたことに気づけた。
何かを精一杯頑張ること。
それだけで人は強くなり優しくなれる。
それを仲間と学べた3ヶ月。
人生で一番濃かった時間だった。
「ありがとう」
「え?」
「俺も成長したよ。優のおかげで。」
「あたしのおかげ?」
「俺の教えた生徒の中で一番根性があるよ!これからも頑張れな。」
「はい!」
「自分のために生きろよ。」
「ん?」
「もっと笑って生きろ!」
「はい!」
このとき大道先生に向けた笑顔が今までで一番いい笑顔だったと思う。
それ以来認めてもらうために頑張ってきた自分がバカらしくなった。
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「まだ決めてないかな。」
したいことがないわけではなかった。
小さい頃から高校野球が大好きで野球部のマネージャーに憧れていたりした。
高校受験が終わってからは野球の勉強をし、少しでも球児の負担を減らしていけるように頑張っていた。
しかし体験入部期間中にマネージャーの先輩ともめて諦めた。
逃げじゃなく、このまま続けたとして
野球を嫌いになってしまいそうな自分が怖かったからだ。
それからどこの部へも行っていない。
でもうちの学校は文武両道に力を入れた全員部活動制の学校。
ホントどうしよう。。。
「あかりちゃんは決めたの?」
「うちはバスケ!」
「バスケしてたの?」
「小学校の時ね♪だからまたしたいなって♪」
うん。
あたしこういう顔大好き。
自分の好きなことする前の楽しそうな笑顔。
「頑張ってね♪」
「うん!」
そんな会話をしている間に学校へ到着。
1年教室へ続く階段を上っているときあたしの運命を変えた人が現れた。
「優ちゃん…」
振り返ると栗色のくせっ毛をした男子生徒。
男にしては白すぎる肌と綺麗な顔立ちに思わず見とれてしまった。
でも誰だろう…
赤いスリッパってことは3年生?
「これ!」
渡されたのは入部届け。
しかもあたしの名前と部活名書いてるし…
「え?」
「男子バレー部のマネージャーやって!」
…えー!!!!
おいおいおい。
いきなり何を言ってるんだこの人は!
男バレ中学になかったし知り合いいないのに行くわけないじゃん!
無理!絶対無理!
「じゃあ今日の放課後体育館の前でねー♪」
そう言い残してその人は去ってしまった。
「イケメンさんだったね!」
いやいやいや、あかりちゃん。
そういう問題じゃないでしょ!
「行くの?」
「行かなきゃダメだよね?待ってるって言ってたし。」
「じゃあ一緒に行こう♪」
「うん!」
その日1日をどう過ごしたのかなんて覚えていない。
ドキドキして落ち着かない1日だった。
この日。
その人との出会いがあたしの人生を大きく変えた。