SトロベリージャM
怒りよりも恐ろしいと感じるその笑みは、小悪魔な妖精にしか出せない色気が漂っていた。


妖精が、熟れていない苦い果実を、色気で磨いて美味に見せ、その果実に魅せられた人間の男が、生唾を呑みこみながら、物欲しそうにうっとり眺めているような感じだ。


「ねぇ、ダイ、わたし、家でゆっくりしたいわ。」


ダイは、普段とキャラの変わった実野里に、戸惑いながら答えた。


「あ・・あぁ、そうだな。さて、帰ろうか実野里。玲、拓斗、世話になったな。」


ダイは、珍しく丁寧な発言をしたあと、2人分の荷物を持ってドアに向かった。


椅子に座って足を組み、その上で頬杖をついた実野里は、上目使いでダイに言った。


「あなた、わたしを歩かせる気?」


羞恥と怒りの限界を通り越した実野里は、完璧にキャラが変わっていた。


ダイ:実野里=Sトロベリー:ジャMが、逆転してしまっていた。


「実野里、そんなこと微塵も考えてなかったよ。先に荷物を車に置きに行こうと思ってね。きみに、不安定なお姫様抱っこを提供するわけにはいかないだろう?」


「そうね。ダイのわりには、よく考えたわね。じゃあ、サッサと行ってきてちょうだい。」


「あぁ、すぐ戻る。実野里、そこの狼どもに気を付けておくんだよ。」


そう言って、ダイは、張り切って部屋を出て行った。




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