SトロベリージャM
「体重測定が免れて、そんなに嬉しいのか？」


「違うよ～だ。じゃあ、また月曜日。」


あっかんべーをしながら、実野里は自分の小さな車に乗り込んだ。


「あぁ、またな。」


ダイは、実野里に背を向け、歩きながら手を上げた。


実野里の車が発車し、エンジン音が小さくなったことを確信したとき、ダイは独り言を呟いた。


「あいつは、俺の秘密を知って、あんな風に笑えるのか？いや、きっと、本当の秘密には気付いていないだろうな。」


その虚しさを含んだ言葉と溜息は、夏風に溶け込んで飛んでいった。


そのころ、実野里は、車内に入り込んでくる、居心地の良い爽やかな風に、頬を撫でられていた。


そんな２人は、怒りの風が吹いていることに全く気付いていなかった。


建物内の冷房の風に包まれた男が、約束を破ってくれた息子と邪魔な妖精を恨めしそうな眼差しで見ていたことを。


その怒りは、機械的な冷風をも温風にしてしまいそうな勢いだった。


だが、この夏、この３つの風は、それぞれ平穏を保っていたので、衝突することもなく、季節は流れた。
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