乙女心
外を散歩がてらに歩いていると、今、一番会いたくない人物が目に入った。
すぐに方向転換をしてわき道に逃げる。
そのまま、
なるべく離れるように、としばらく走って距離をとった。
きっとあの人は気付いていない。
「ふぅ~、ココまで来れば大丈夫でしょ。」
ほっとする反面、どこからか悲しみが込み上げてきて私はぎゅっと服の裾を掴んだ。
「何が大丈夫なんだ?」
誰も居ないはずの後ろから聞こえる声。
まさかなぁ~とか思って頬を抓ってみるが、痛かった。
意を決して振り向くとそこにはやはり・・・
’会いたくない’人が居た。
「ん?」
そう言いながらニッコリと浮かべる笑顔が逆に怖いです。
「何で逃げたんだよ」
「・・・・・・。」
私はそっぽを向き黙る事を決め込んだ。
「何かあったか?」
「・・・・・・。」
「俺が嫌になった?」
「・・・・・っ。」
ただ、首だけ横に振るとあの人はコテンッと小首を傾げた。
「俺、何かしたか?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・嫉妬か。」
「!!」
大きく肩を揺らしてしまった私に、あの人はニヤリと笑った。
「違っ、・・・・・」
私は反論しようとしたが図星をつかれてしまい言葉が自然と止まる。
困ったように溜め息を吐いたあの人。
その姿に、心臓がつぶれると思うほど苦しさを覚えた。
愛想をつかれてしまったらどうしようかとただそれだけが心を支配し始める。
「ここん所、ずっと俺の事さけてたな。軽く傷ついたぞ?」
「ご、・・・ごめんなさい。」
目頭が熱くなるのを感じ、俯く事で顔を隠した。
「一応言っておくが・・・。
話してる女とかに興味があるから話してるわけじゃないからな。」
「・・・・。」
「お前以外、一緒に居て楽しいと思わないし、嬉しいとも思わない。
ずっと一緒に・・・居たいとか、思うのお前だけだからな・・・・。」
小さくなった声に勢い良く顔を上げると、
あの人が照れたように笑う顔がそこにあった。