ゆるふわなキミ
「かっ、春日さん!俺と付き合ってください!」
――放課後。
誰もいない体育倉庫の横に呼び出され言われた。
真っ赤な顔で私を真っ直ぐに見つめてる。
ちなみに、知らない人。
廊下ですれ違ったかなー?とは思うけど、名前もクラスもそもそも同じ学年なのかもわからない。
「えと、私なんかのどこが……」
「そ、そりゃあ!やっぱりすごく可愛くて……この前楽しそうにピョンピョン飛んでるの見て、か、可愛なって……
ふわふわしてて優しそうたし、すごく女の子っぽいし、ま、守ってあげたくなるというか……」
……ふぅ……
気づかれないようにため息をついた。
「……そこまで私のことを想ってくれてありがとう。でもごめんなさい。お付き合いはできません。」
「え……ど、どうして……ま、まさか、す、好きな、ヤツでもいる、とか……?」
「………………」
「あ、はは!そうだよね!春日さんみたいな可愛い子にいないわけないもんね!いや、ごめん!あはは!」
「……ごめんなさい」
「いや!いいんだ!そ、それじゃあ!」
去っていく男子の背中を見えなくなるまで見つめていた。
見えなくなってから、ふう、とため息をつく。
やっぱり外見か……
もう一回ため息。
『可愛くて愛嬌のあるキミが好きだったのに 』
やめてよ。
私はそんなヤツじゃない。
『ウソつきだ』
やめてよ。
勝手に決めつけたのはそっちじゃない。
………………
辛い思いをするくらいなら一人でいい……
でも。
考えたくないのに。
嫌なのに。
つい。
願ってしまう。
こんな私でもいいって言ってくれる人が現れることを……