ゆるふわなキミ


本当に付き合うと思わなかった。ウソツキ。男に媚び売るサイテー女。ウソツキ。アイツが勘違いしただけなのにウゼー。ウソツキ。可愛くて愛嬌のあるキミが好きだったのに。ウソツキ。ガッカリだよ。ウソツキ。こんな女だと思わなかった。ウソツキ。かわいくねーなマジで。ウソツキ。性格悪ぃ。ウソツキ。ウソツキ。ウソツキ。


「あなたに……あなたが、私の何を知っているのよ……!
ホントは好きじゃないくせに。ホントは見た目だけ見てるくせに。ホントは私のこと可愛いなんて思ってないくせに……!」
「………………」
「嘘つき……ウソツキッッ!!」

そう言うと私は走り出した。
どこを走ってるかわからないけど、とにかくゆるふわから離れたかった。だから必死で走った。


たくさんの記憶がフラッシュバックする――


好きでこんな見た目してるんじゃない!
男に媚なんか売ってない!
私は元々こういう性格してるの!
なんで!?

……なんで……それがダメなの……??


視界がぼやける。どうやら私は泣いていたらしい。
またゆるふわに涙見られちゃったかな。なんか悔しい。
ぐい、と乱暴に涙を拭った。街行く人の何人かが私をびっくりした顔で見てたけど気にしない。

気にしない。そう決めてるんだ。
誰かが私を好きなんて嘘。わかってるんだ。いつもならそんな言葉気にしないんだ。

でもどうして……

ゆるふわの言葉に、こんなに反応してしまうんだろう……



そのあと、追いかけてくるかなとか思ったけどゆるふわは来なかった。
うつむいているとナンパされたりもするんだけど、今日に限ってそれはなく。いや、たぶんすごい変な顔してたんだと思う。泣き顔だしね。
家に帰ってすぐお風呂に入って落ち着いて。
ごはんと宿題が終わった頃。メールが届いた。

……ゆるふわから。


『萌ちゃん。今日はありがとう。おやすみ♪また明日!』


泣いてしまったことも、怒鳴ってしまったことも、勝手に帰ってしまったことも。
何も責めずにただ『ありがとう』の文字。


また……泣きそうになった……


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