ゆるふわなキミ
「だって俺、萌ちゃんと遊びたくて遊びたくて仕方なかったんだもーん」
「そんなの知りません!帰して……って……」
うるうるした瞳でまっすぐ私を見つめる。コイツの正体を知らない女子なら、これだけでイチコロになるような本当に寂しそうな、人の心をちくちくさせる悲しそうな顔。
でも……気になるのはその表情とは真逆の行動。正確に言えばゆるふわの持っているもの。
「……何やってるんですか……」
「ん?こうやったら何かTVの司会者っぽくない?ほらしゃべってしゃべってっ!」
そう言って私の方に楽しそうにマイクを向ける。
………………
……いらぁぁぁっ……!!!
全っっっっっっっっっっ然、話が進まない……!!!
私が文句の言葉をぶつけてやろうかと思いっきり息を吸った次の瞬間――
「じゃあ、さ。俺の質問に答えてくれたら今日は帰してあげるよ」
「……質問?」
怪訝な顔をしてゆるふわを見る私。
いや、もうだから私がしゃべるたびにこっちにマイクをいちいち向けんな。腹立つ。
そう思っていると、ゆるふわの顔は急に真剣になった。
まっすぐ私を見つめる。少し怒っているような少し戸惑っているような、複雑な、でも、すごく真剣な顔……
「萌ちゃんさ、今日誰を待ってたの?」
「え?」
「いつもだったらあんな風に校門にずっといないじゃん。誰か待ってたんでしょ?男?女?先生?」