ゆるふわなキミ
ぎゅうう……っと抱きしめられて少し痛くて、でも息が止まったのはそのせいじゃない。
体がさっきよりも熱くなる。頭がさっきよりも混乱する。心臓が破裂しそうなくらいに高鳴る。
ゆるふわはそんな私のことなんて気にせず、私を抱きしめる腕の力を緩めることなく、むしろ、少しだけまた強い力で。
「あー……萌ちゃんあったかいなぁ……」
のんきな言葉。おかげで少し沸騰しかけた頭が冷めた。
カラオケのTV画面から流れてくる新曲紹介や、漏れ聞こえる他の人のカラオケの音や声もようやく耳に届き始めた。
「……は、離してください……」
「やーだ」
「なんでっ…!?」
「だって、萌ちゃん抱き心地いいんだもんっ」
「は!?」
「やっぱ俺、萌ちゃん好きだぁー……」
「なっ……!?!?」
やっと落ち着いてきた頭の中がまた混乱する。
さっきとは違う感情。
すなわち。
不快感。
――好きとか……うそつき……っ!!
ゆるふわの腕を掴んでいた手に力をこめて自分の体からゆるふわを引き剥がす。
そしてキッ!とゆるふわを睨む。すると、またまたまた目を丸くするゆるふわ。
多少引き剥がしはしたけど、背中から肩にゆるふわの手が動いた程度で全然離れない。ゆるふわの胸に両手を置いて思いっきり押す。
でも動かない。
「離してください!」
「やだ」
「なんで!?」
さっきとまったく同じ会話。でもさっきとは表情が、感情が違う。
憎しみの気持ち。戸惑いの気持ち。
なのに……
変わらないのはゆるふわの優しい笑顔。
「俺、萌ちゃんが好きだよ……」