私だけの王子様
悠斗とは本当に終わりなんだ・・・。
最初は全然興味のない人だったのに今は全然違うよ。

どうしてだろう。
こんなにも悠斗の事を考えて、悠斗の事で悩んでいる。
頭の中は悠斗でいっぱい。
こんな気持ちは初めてで、どうしたら良いのかわからないよ・・・。


「ただいまー。」

『あら、千夏。おかえり!今日は早かったじゃない。ご飯食べる?』

「ううん。疲れたから寝る。」


お母さんにそう告げて自分の部屋に閉じこもった。
その瞬間に携帯の着信メロディが鳴った。
今の私とは全くもって気分の違うポップな曲だ。

沙耶からの電話だ。
光るディスプレイには[沙耶]と表示されている。

さっき見た沙耶と悠斗の親しげなシーンを見た私は電話に出るのに抵抗があった。
だけど鳴り止まない携帯に仕方なく通話ボタンを押した。


「もしもし・・・沙耶?」

『おー、千夏!電話に出るの遅いって!』


電話に出た沙耶は普段と変わらず明るい沙耶だった。
そんな普段と何も変わらない沙耶に戸惑う。


「ど、どうしたの・・・?」


何を言われるのか不安になった。
もしかしたら“立花くんと付き合う事になったんだ!”なんて言われるかもしれない。
それに付き合う事じゃなくても“本気で立花くんの事、好きになった!”かもしれない。
って・・・何で全部、悠斗の事何だろう・・・。


『次の日曜日は千夏の誕生日じゃん?!だから、お祝いに行くから!』

「え、誕生日・・・?!本当だ・・・。」


自分の誕生日を忘れていたなんて、これはかなりの重症かもしれない。

だけど“次の日曜日”を聞くと、更に悠斗の事を考えてしまう。
確か次の日曜日は、悠斗と付き合ってから一ヶ月の日だ。今はもう、付き合ってもいなく他人の様なものだけど・・・。


『千夏ったら自分の誕生日を忘れてたなんてアホだねぇ。』


大笑いをして言う沙耶に私も思わず笑いが出てしまった。本当に自分でもアホだと思ってしまったから・・・。


『それと、千夏・・・。』

「ん?どうしたの?」


今度は、さっきまでの笑い話ではないと直感で感じとった。
だから私は沙耶と同じ風に真剣になって沙耶の次の言葉を待った。
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