私だけの王子様
しつこく聞いてくる沙耶に私は呆れて最初から最後まで昨日のエピソードを話した。


「ふーん。じゃあ、千夏は立花くんの事を恋愛対象としては見てないって事?」

「・・・うん。カッコイイとは思うけど恋愛感情で好きまではいかない・・・。」


なのに一ヶ月だけ付き合うなんて悠斗の事を好きな女子から見れば嫌な女だよね。
でも・・・あの時どうしても断れなかったんだ。
悠斗の瞳を見ると胸が締め付けられて「ゴメン、付き合うのは無理。」とは言えなかった。


「でも千夏。だんだん立花くんに惚れちゃうかもよ~?」

「そうかな・・・?」


私が悠斗を好きになる・・・?そんな日がやって来るのだろうか。


「友達感覚で付き合ってたら良いんじゃない?今日の放課後、一緒に帰るんでしょ?その時変に意識しないで友達と思えば良いんだよ!」


そんな沙耶のアドバイスは何だか私が悠斗を意識してるみたいな言い方だった。

一緒に帰るのは特別、嫌って訳じゃない。かと言って嬉しいとも思わない恥ずかしいって言う気持ちだけ。これって意識してる事になるのかな?

もう夕方だと言うのに空は一向に暗くならない。まだ薄い青空が広がっている。これが夏の特徴なのかな。

私は悠斗と待ち合わせをした校門の前に居る。
やっと来たと思った悠斗は予想通り女子達に囲まれながらやって来た。

その女子の中で一人、目立つ子が居た。
どっからどう見ても悠斗の手にしがみついている。
その光景はまるでカップルの様。


「あ、千夏ちゃん!」


そう私の名前を呼ぶと悠斗は、隣に居た目立つ女子に手を離して貰っていた。
そして優しく手を振り終えた後、私の元に嬉しそうに走ってきた。


「さっきの女の子、誰?」なんて聞けるはずもなく私達は歩き出した。

「悠斗、どっか寄って行かない?」

「えっ!本当ですか?じゃあ、千夏ちゃんの好きな所に行こ?」


好きな所と行っても、お金持ちの悠斗とは釣り合わない場所かもしれない。
私達が普段行くようなお店に悠斗は行った事があるのかな・・・?
その時、ふと視界に入ったのは自営業でしている小さなアイスクリーム屋さんだった。
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