私だけの王子様
「悠斗、アイスクリーム食べよう？」


そう言うと悠斗は何の迷いもなしに「はい。」と笑顔で頷いた。


「悠斗は何にする？」


注文をしようと悠斗に尋ねると悠斗は「あまり甘い物は食べないんだ。ゴメンね、千夏ちゃん･･･。」と悲しい表情を浮かべた。

悠斗は甘い物がダメなんだ。
悠斗って大人だなぁ。
私は注文するためカウンターへと向かった。
その間、悠斗には近くのベンチで待って居て貰う事にした。


「あの、ソフトクリームのチョコを下さい！」

『はい、チョコですね。少々、お待ち下さいね！』


営業スイマイルだとは思うけど、本当に綺麗に笑う店員さんは愛想も良くて良い人だなって思った。


『はい、ご注文のソフトクリームのチョコです！』

「あ、ありがとうございます！」


そう頭を下げて悠斗が待っているベンチへと向かった。
ベンチに目をやると悠斗は私に気づいてニッコリと笑顔を向けてくれた。
何だか私だけソフトクリームを食べるのは、ためらいがあった。


「悠斗、本当にいらないの？」


ソフトクリームをペロッと舌で味わった。
チョコの味が口に広がって美味しい。
それにこのチョコはあまり甘くなくて丁度良かった。


「じゃあ、少し頂きます。」


悠斗はそう言うと私の手にあるソフトクリームをパクリと一口だけ食べた。
その行動があまりにも突然で、あまりにもカップルらしくて。


「え、立花くん･･･？！」


思わず口から出た悲鳴の様な叫び声。呼びなれていないせいか咄嗟の時は、つい苗字で呼んでしまった。


「そんなに驚かなくても良いじゃないですか。僕達は付き合ってるんですから！それに名前で呼んでくださいね？」


悠斗から出た言葉はあまりにも私の心臓をドキドキさせるものだった。
すぐ顔が赤くなる悠斗なのに、どうしてこんな大胆な事を言えるんだろう。
もしかして･･･悠斗って天然？
何だか最初に比べてキャラが変わっている様な気がして変に意識しちゃう。

でも、これは恋愛感情じゃない。私がドキドキしてるのは悠斗じゃない。悠斗の行動だよね･･･。
なんて自分の心に言い聞かせたんだ。
< 5 / 23 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop