私だけの王子様
ソフトクリームを食べ終わると、悠斗はニッコリと微笑んだ。


「じゃあ、千夏ちゃん。次は、どこへ行きますか?」


まだ行くんだ。てっきり帰ると思ってたから、私はどうしようか迷った。
そういえば私だけソフトクリーム食べたから悠斗には悪いって思ってたから、悠斗が好きな物でも買ってあげようかな・・・。
なんて本当の恋人の様に思ったりしている自分に驚くよりも恥ずかしさが沸いて来る。


「悠斗は何か食べたい物とか・・・ないの?」

「僕ですか・・・?僕は・・・千夏ちゃんの手作りの物が食べたいです!」

「え?」


悠斗を見るといつもの様にニコニコと笑顔を向けている。だけど、ほんのりと頬を赤らめている。
そんな悠斗の照れくさそうな笑顔を見ると告白の時みたいに断れない。

こういうのって私の意思が弱いんだよね。
笑顔でやられちゃうなんて・・・。
これじゃあ本当に悠斗が好きみたい。そんな事をさっきから思っている私。


「手作りかぁ・・・。うん、良いよ!」


特別、料理が上手って訳じゃない。
何を作るかなんて、まったく決まってない。


「本当ですか?楽しみに待ってますね!」

「うん。」


どうして悠斗はそんなにニコニコと笑うんだろう。その笑顔は反則だ。


家に帰ると私は訳もなく焦っていた。
いや、訳はあるかな。
だって悠斗に何を作ればいいのかを迷いに迷っているんだから。
やっぱり、お菓子系だよね?でも悠斗は甘い物が苦手だって言ってた。
家庭的な料理の方が良いのかな。

「手作り料理」を食べたいなんて言われた事がないから余計にでも焦って迷ってしまう。
日ごろ、料理なんてする方じゃないし。


・・・――

「おーい千夏。どーしたの、そんな暗い顔してさ。まさか立花くんと何かあった訳?」


朝だと言うのに元気で一気に話す沙耶に私はついていけなかった。
いつも明るくて沙耶は元気だけど、元気すぎる・・・。
異常にテンションが高いんだから。

それに沙耶は人の感情や変化には敏感だ。
顔色一つで、わかっちゃう感じだもんね。
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