私だけの王子様
「何かあったと言えばあったけど、ないと言えばないかな。」


そんな曖昧な答えに沙耶は納得してない様。


「何があったの?話しなさいよ!心配してるんだからね。」


これは心配しているんじゃなくて、ただたんに気になるだけでしょ、沙耶。
そんな沙耶に不満を抱きながら「沙耶には秘密だから!」なんて意地悪っぽく言って見た。

「教えてくれても良いじゃんかー!千夏と、あたしは友達でしょー?!」


なんて沙耶は、しつこく詰め寄ってくるから私は負けてしまった。
いわゆる全部、白状したって事。


「悠斗がさ・・・私の手作り料理を・・・食べたいんだって。それで何作ろうか迷ってるの。一応、お菓子系が良いんだけど・・・。」

「立花くんに?千夏って料理、得意だったっけ?」

「ううん。全然・・・。」


料理なんか得意だったら家庭科部にも入ってるよ。
お母さんの手伝いとか箸並べとか盛り付けするぐらいだし。


「千夏ってさ、あきらかに不器用だもんね。作れるわけないよねー。」


必死に迷ってる私を半笑いで見て馬鹿にする沙耶に言わなきゃ良かったと後悔が生まれた。


「もう沙耶に言わなきゃ良かった。」

「あはは。ゴメン、冗談だって!そんで、お菓子系を作るんでしょ?」

「うん。お菓子の方が簡単だと思って。」


そう言うと沙耶はニッコリ笑って得意げに言った。


「なら、あたしに任せて!あたし、お菓子とか得意だから!立花くんの口に合うかは保障しないけどね。」


最後の言葉はなんとも無責任だったけど沙耶の料理の腕前が凄い事は私も知ってる。
本当の料理人みたいな料理を作るんだよね。
人には誰でも意外な特技があるって事だ。


・・・―

今日は土曜日。
沙耶とお菓子を作ると約束した日だ。
場所は勿論、私の家。沙耶が来る事になっている。
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