ロンリーファイター
本当は、わかっている。
峰岸さんみたいな可愛いやり方の方が、社会の中では生きやすいこと。
特にうちの会社は、事務の女性はほとんどが派遣社員。可愛く仕事して、彼氏をみつけて結婚し寿退社をする人がほとんどだ。
上司相手にだって、言葉でぶつかるより可愛く弱く適当に同調するのが一番楽な過ごし方。不満も言わず、『そうなんですね~』と笑って、いないところで悪口を言って。
だけど、私にその選択肢はない。
毎日毎日仕事に追われている私はかわい子ぶっている暇なんてないし、同調出来ないことに笑顔で頷くなんて出来ない。
仕事上で言うべきことは言いたいし、言わずにはいられない。熱くなるとついキツく言っちゃいがちな性格だし。
「だから今回の企画はA案がいいと言っているだろう!」
「はぁ!?勝手に決めないでください!!」
それは、会議室でもそう。
今日も行われている企画会議の中、怒鳴る中年男性である部長に私は勢いよく怒鳴り返す。
「何でですか!?B案のほうがお客様の目を引くし売り上げ取れる見込みもある!細かい調整をすればまだまだっ……」
「まぁまぁ、椎菜落ち着け。な?部長も少しこいつの話を…」
「滝さんうるさい!落ち着けるか!」
「な!お前仮にも先輩に向かってだな…」
そんなその場を鎮めようと間に入る滝さんにも八つ当たりのように噛みつく。そこから更に広がる言い合いに、部長は机をバンッと叩く。
「ええい、うるさい!口答えするな!たかが女の社員が!!そういう性格だから未だに嫁にも行けないんだろう!!」
「なっ~……」