ロンリーファイター
「別に俺、年取るの悪いと思わないっすよ」
「そうかなぁ…」
「そう。会社の人たちも何だかんだ言ってたけど…でも椎菜さん、まだ30歳じゃないっすか。まだまだ…」
「男の人は“まだ30”だろうけどさ…女は違うのよ。“もう30”なのよ」
「?そうなんすか?」
「そうよ!!だってこれから誰かと付き合って何年かして結婚、挙式は別にいいかな的な気分にもなりそうだしやるとしても似合うドレスや着られるデザインが限られる!!ここから家立ててローン組んでも支払い終わる頃にはいくつなんだろうとか、子供出来ても高齢出産扱いされるし、子供が20歳の時自分いくつ!?みたいな!?」
「…現実が物凄いっすね…」
「そういうものなの、女は!!」
いまいちわからなそうに首を傾げる田口くんに、私もカップを手にする。
「…ましてや、私たちがいるのはアパレルでしょ?この世界では女は30代から見られる目が違ってくるし…自分たちもわからない現代の流行りを必死に勉強してついて行かなきゃならない」
「……」
「難しい、よねぇ…」
そう苦い顔で呟き、ふと思い出したのは先程貰った紙袋の存在。