ロンリーファイター
「今日、何時に終りっすか」
「今日?えーと…予定では8時、かな」
「じゃあ、飯行きません?」
「え?」
「お礼とかお詫びとかナシの、割り勘で」
「……」
至って普通の顔をした彼から小声でボソボソッと呟かれたのは、突然のお誘い。それに対し私は迷うことなく頷いた。
「う、うん!行く!」
「じゃ、その頃にまた駅で」
田口くんはそうすんなりと約束を取り付け、また周りにコーヒーを配るべく歩き出した。
「……」
お礼とかなしで、二人でご飯…ってことは、これってデート?
っていやいやいや!ないない!ただ、普通にご飯食べようってだけで…
けど、それだけで充分嬉しい。
(よし!夜まで頑張る!)
嬉しさに緩みそうな口元をぐっと堪えると、気合いを入れ直しまた書類と向かい合った。