ロンリーファイター
普段なら、まだ仕事残ってるのに残業しないで帰るなんてしない。
けどこっちを優先してしまうあたり、焦ってるのかな。
会って話して早く決めなきゃって、余裕ないのかも。
「高城さん」
「稲瀬さん。こんばんは」
「お待たせしてすみません」
「いや、僕も今来たところです。…今日は、この前とはまた違う格好ですね」
「あ…すみません。ご存知の通り、普段はこんな感じなんです」
「はは、そっちの方が稲瀬さんらしい」
高城さんは、いい人。
いつも笑顔で心も広い。人が喜ぶ言葉をよくわかってる。
「今日はイタリアンにしようと思うんですけど、どうですか?」
「本当ですか?やった、イタリアン大好きです」
「ならよかった」
行くお店はやっぱり高そうな所で気後れしてしまうけれど、そんな所でも自然体でいてくれる。