ロンリーファイター
「…稲瀬さんは、結婚しても仕事続けたいですか?」
「……」
オシャレな音楽の流れるイタリアンレストランで、ナイフとフォークでチキンソテーを切る私に高城さんは唐突に問う。
「いきなり、ですね」
「少しでも稲瀬さんのことを知りたいと思いまして」
「そうですね…出来ることなら、続けたいです」
その問いにひとつ答え、チキンを一口食べた。
「けど今まで通りの仕事をしていたら当然家のことなんて出来ないので…多少、そこは減らさないとなぁと」
「ほう」
「高城さんは、専業主婦になってほしい派ですか?」
「まぁ、そういう気持ちもあるけれど…相手のしたいようにさせてあげたい、って気持ちが一番です」
「じゃあ例えば、私が今まで通り仕事しても?」
「それはそれで、結局許してしまうでしょうね。僕が惚れ込んだのは、そんな稲瀬さんですから」
「……」
やっぱり、いい人。
そのままでいいんだって笑って、結婚後の形も縛ったりしない。
(…この人となら、いいかも)
結婚しても、いいかもしれない。
そう思えてきてしまう。