ロンリーファイター



ー…



「稲瀬さぁん」

「?」



そんなある日、いつも通り黙々と仕事を片付けていると名前を呼んだのは峰岸さん。



「どうしたの?」

「これ、管理部から回ってきましたぁ」

「あ、ありがと」



周りの皆がバタバタと仕事に追われているなか、峰岸さんはそう私の方へと持ってきた書類を手渡す。



「……」

「…?」



すると不意にこちらへじっと注がれる視線。



「?どうしたの?」

「稲瀬さん、本当に社長の息子と結婚するんですかぁ?」

「え?いや、まだそうと決まったわけじゃないけど…」

「けど結婚してもいいかな、とは思ってるって感じですかぁ?」

「うーんと…」

「私、正直稲瀬さんって違う人のことが好きなんだと思ってましたぁ」

「え!?ないない!好きな人なんていない!!」

「ふぅん…そう言うならそういうことでいいですけどぉ」



一瞬ギクリとしながらも否定をする私に、峰岸さんはこちらを見つめたまま。


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