ロンリーファイター
16.
ー
「…田口、くん?」
「…!」
自宅へ帰ろうといつもの道を歩いていた帰り道、向かいから歩いて来たのは偶然か田口くんだった。
思わず名前を呼んだ私に、その目は少し驚いて向けられる。
「何してるの?こんな時間に…あ、どうせ飲んでたんでしょ。また西島さん?」
「今日は滝さん。恋愛指南されてたっす」
「滝さんから恋愛指南って…どうなのよ、それ」
はは、と笑う私に田口くんはゆっくりとこちらへ近付いた。
「…そういう自分は?社長の息子とこんな時間まで飲んでたんじゃないんすか?」
「……」
いつものように無愛想に問う言葉に、こぼれたのは苦笑い。