ロンリーファイター
「家、どのへんっすか」
「にゅーたうんのー…にかいー…」
「…アバウトすぎでわかんないんすけど。身分証とかに住所書いてないんすか」
「あるよー!はい!」
酔っ払いのテンションに身を任せ、財布から免許証を取り出し田口くんに手渡す。
「運転手さん、ここまで」
「かしこまりました」
それをもとに、タクシーは夜の街を走り出す。
「あー…けっこんかぁー…いいなー…」
「…稲瀬さんも結婚とか憧れてるんすか」
「とーぜん!うらやましーよー!このとしになるとみーんなもうけっこんしてるしさぁ、こどももいるしさぁー」
「はぁ」
「おやもうるさいし、まわりにはねたにされるし、ろうごがふあんでしかたないし…」
「…現実的っすね」
「それよりなにより、むなしい」
「……」