ロンリーファイター







「椎菜さん、コーヒーどうぞ」

「ありがとう」



ある日のオフィスでいつも通りの仕事をこなすお昼過ぎ、涼平くんはいつも同様カップにコーヒーを注ぎ配る。



「今日もうち、泊まって行きます?」

「え?別に大丈夫だけど…私今日残業だから行くの遅くなるよ?」

「大丈夫っす。何時まででも待ってるんで」

「…うん、」



小声でコソコソッと話して、じゃあまたと彼はその場を後にする。



(待ってる、か…)



涼平くんが何てことない顔で言う一言が、嬉しいな。

こんなに幸せでいいのかな、なんて柄にもなく思えてしまうくらい。



「おい稲瀬ー、この店クレーム来てるぞ。対応してくれ」

「はーいっ♪」

「?随分上機嫌だな…」



いいんだよね、きっと。

そう嬉しさを噛み締めコーヒーを一口飲むと、また仕事に取りかかった。


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