ロンリーファイター
「…何でよ、あんなおばさんと」
「別に歳とか気にしないし。見た目で差とか出てきても、それもどうでもいいいし」
「何がそこまでいいわけ?」
「何だろ…沢山ある」
「…、」
好きな理由なんて、こんな所では言葉にしきれないくらいある。
けど、あえて一つだけ言うのなら
「あの人となら、長い人生楽しく生きられると思うんだよね」
笑って怒って泣いて、また笑って…いつも真っ直ぐな表情の彼女。
この先の時間を共有したいとか、気持ちを分け合いたいとか、同じ景色を見たいとかそう思った時に浮かぶのは彼女のその顔だけなんだ。
その存在ひとつで、俺の人生はきっと輝くと思えるから。
「……」
笑って言い切った俺に、杏里はぐっと言葉を堪える。
「…おばさんが先に死ぬかもよ」
「それはない。あの人絶対長生きする。うん、絶対」
断言する俺に、それまで強張っていたその顔はふっと笑みをこぼした。
「だから、大丈夫」
誰に強制されたわけでもない。
俺自身が、彼女を選んだ
「…わかった」
杏里は納得したように頷いて、ポケットから鍵を出し俺へ手渡す。
「こんないい女逃すなんて、勿体無い。涼平のバーカ。後悔しても知らないんだから」
「バカで結構」
「…でも涼平のそんな優しい顔、初めて見た。ちょっと悔しいな」
そして公園を出るように歩き出す。
「じゃあね、涼平。あの人にも謝っておいて」
「…ん」
その別れは、あっけなく終わったあの日の別れとは違う。互いにすっきりとした顔の別れ。