ロンリーファイター
「あれ?田口は?」
「田口なら営業で…あ、丁度戻ってきた」
「戻りましたー…」
「よっ、田口。久しぶり」
「滝さん…何してるんすか」
「いやー、お前もすっかりスーツが似合うようになって…大人になったなー」
「25歳相手にその発言ってバカにしてます?」
涼平くんは、無事大学卒業後に予定通りそのままエミューに就職。今ではスーツがよく似合う、やり手の営業マンだ。
「で?嫁は?」
「嫁って…まだ結婚してないんすけど」
「あれ?まだしてないのか?」
「まぁ10も離れてますから…向こうの親父さんに『せめて君が社会人として一人前になるまでは、認められん』って言われたんで」
「うわ、厳しいー…」
「ま、認められるまで何年でも気長に付き合うっすけど」
「そんなことしてるうちにあっという間に年寄りだぞ」
「大丈夫っすよ」
そして、私は
ードタバタドタドタッ…
「ごめん!15時から会議なの忘れてた!!あっ、でもその前に向こうに電話っ…あ!あれやりっぱなしだ!でもこっち…やっぱ会議あと30分後!!ごめん!!!」
相変わらず慌ただしく、オフィスを駆けて飛び出した。
「…相変わらずだなぁ」
「あれなら、年寄りになるまでまだまだでしょ」
「それもそうだな」
結婚も出産も、もう少し先になりそうな未来。
だけど、隣にあなたがいるならきっと大丈夫。
それだけで、素敵な未来
end.