ロンリーファイター



周りが私を何と呼んでいるかなんて、大体知っている。



『仕事の鬼』

『怖い女』



女としては不本意な呼ばれ方だけど、仕方ない。確かにその通りではあるし、いちいち気にしてちゃ何もできない。

fem.は女の子主体の店。そのくせ男ばかりで、人数もいないこの会社では自分がああだこうだと言って動かねば始まらないから。



とにかく至急全店に連絡入れて、データ確認して……あ、15時から会議だっけ。

バタバタと書類に目を通してはまとめて、また机に書類の山が出来ていく。



「あ~っ、またデータ間違えちゃったぁ」



するとその時、斜め前のデスクからは甘く高い声が響く。



「もぉ~、このやり方よくわかんなぁい」

「綾乃ちゃん、どうしたの?」

「あーっ、西島さぁん、助けてぇ~」



それは事務として働く女性の中では一番若い女の子・峰岸さんの声で、機械に弱いらしい彼女は今日も甘えたような声で、男社員に助けを求めている。


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