ロンリーファイター
「ここはこうするんだよ」
「あっ、そっかぁ!ありがと~!西島さんってたのもしー」
「他に分からないところある?」
「あとぉ、こことぉ、こことー、あとこれも~」
って、ほとんどわかってないじゃん……!
会話に聞き耳をたてながら、呆れたように心のなかで突っ込んだ。
「綾乃ちゃん、可愛いよなー」
そんな私の背後では、のんびりとコーヒーを飲む男性社員たちが小声でデレデレと言う。
「あぁ、ふわふわしてて守ってあげたくなるっていうかさぁ」
「ちょっとぶってるっぽいところもあるけど、どっかの誰かみたいな怖い女よりは全然……」
無言で睨むと、二人はそっと目をそらし散っていく。
いや、まぁ確かにね。峰岸さんは可愛いと思う。
毎日化粧ばっちりで、いたって一般的な事務員の制服すら可愛く着こなしてて、髪もふわふわに巻いているし、香水も……少しきついけど甘い匂い。
背も低くて体も細くて、その上若くて、事務の女の子たちはみんなそんな感じではあるけれど、あの子はその中でもダントツだ。