ロンリーファイター
あれくらい美人なら、素直に甘えた方が男受けいいってわかってるんだろうなぁ……。
甘い声にデレデレとする男性社員に、呆れたように苦笑をこぼす。すると不意に、目の前に差し出された紙コップ。
「稲瀬さん、コーヒーどーぞ」
「あ……田口くん。ありがとう」
それはアルバイトの男の子・田口くんが淹れたコーヒーで、コップからは熱々の湯気が漂う。いい匂いのそれに砂糖とミルクを少量入れ、そっと口をつけた。
おいしー……。
「田口ー、こっちにもくれ」
「今いくっす」
田口くんはそう他の社員に呼ばれ、トレー片手に向かって行く。