ロンリーファイター
「田口〜、お前はいいよな、バイトだから私服で涼しげで」
「そうっすね」
「……」
そう見つめた先には、Vネックのシャツ一枚で涼しげな顔でコーヒーを淹れている田口くんの姿。
相変わらず忙しい毎日。
あれ以来、彼とは特に何もないし食事にも行っていない。峰岸さんも気に食わぬ顔をしながらも、仕事はきちんとしてくれているし…平和だと思う。
ただ近付いていた気がした彼との距離も変わらぬままで、もどかしい気持ちの毎日だけれど。
(…って何考えてるんだか自分!私と田口くんはただの上司とバイトであって、それ以上の気持ちはなくて…!)
「椎菜さん」
「?」
「はい、今日はアイスコーヒーっす」
「……」
その言葉と差し出されたのは、紙コップに氷を浮かべ注がれたコーヒー。
少し、ほんの少しだけ
その優しさに惹かれているだけ
「…ありがと、」