ロンリーファイター
「…みず、のむ」
「大丈夫?持ってこようか?」
「だいじょぶっす…」
そうおぼつかない足取りで、田口くんは部屋の端にある冷蔵庫へと向かう。
「……」
(…田口くんの、部屋)
ちら、と辺りを見れば、水色のカーテンとクローゼットにかけられた服たち。テーブルに置かれたままの雑誌…と至る所に散らばる生活感。
それらが日頃、彼がここで生活しているのだということを実感させる。
何気なしに目を向ければ、部屋の片隅には適当に積まれた大学のテキストがある。
(テキストあんまり使ってる形跡がないけど…ていうかいつもバイトばっかりしてて単位大丈夫なのかな?)
ってこんなにじっくり室内観察したりして何してるんだ自分!
田口くんも送り届けたことだし、帰ろう!!
「田口くん!じゃあ私帰っ…」
そう言いながら振り返った、瞬間
「……」
「…!」
すぐ目の前には、彼の顔。
(…ちっ、近い!!)
触れそうなほどのその距離に、思わず動揺してしまう。