ロンリーファイター



「椎菜さん」

「はっはいい!!」



そうしていると突然呼ばれた名前に、私はビクッと手を止め後ろを振り返る。



「……」



そこにいたのは、いつも通りの顔をした田口くん。



「…昨日はすみませんでした」

「え!?あ、うん大丈夫!二日酔いは平気?」

「あー…少し気持ち悪いけど平気っす」

「そ、そっか…」

「昨日俺、何か椎菜さんにしでかしたりとかしてないっすか?」

「へ!?」

「いや…家着いたあたりから記憶ないんすよ」

「…へ?」

「だから何か失礼なことしたりとかしてたら申し訳ないと思って…って椎菜さん?どうかしたんすか?」

「う、ううん…どうもしてないし昨日も何もなかったから…」

「?ならいいんすけど…」



…って…覚えてないんかい!!!



こんなに人を戸惑わせておいて…

ドキドキさせておいて…

本当にただ酔って押し倒したってだけだったわけ!!



くそっ!と悔しい気持ちにさせられながらパソコンへ戻ろうとした私に、田口くんは言葉を続ける。



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