只今、黒天使に仕えてます
「えっ、ちょ、待って。マジ? 来る?」
俺は焦った。でも体が動かない。焦る。動かない。焦る。動かない焦る動かない。
閉まる踏切を見ながら俺は、パニクッた。
列車の光が近づく、ああ、俺の存在気づいてくれねぇかな。
……無理か。 寝巻きのまんまの黒ジャージで来ちまった。
来い!! 空から蛍光塗料!!
んなわけないな。
電車が近づくにつれて、俺は逆に冷静になってきた。これはどんな心理だ?聞いたことある気もするが、調べようとしても、もう無理か。
約16年と2ヶ月生きてきた俺の命もここまでっていうとこだが最期にもうちょっと遊んでいたかったな まあ今更何を悔やんでも終わりなんだが人間最期に思う事くらいは綺麗事でもかまわんだろう とりあえずは親か 最近どっちも単身赴任でぱったりと会ってねぇが俺が死んだ時くらいは帰ってくるだろう なんか悪いな 自分たちの息子が深夜にコンビニ行った帰りに足を踏み外して電車にひかれて死にましたっつってな 笑うかな さっきからふざけた事ばっか言ってんな俺 こんなんじゃ 綺麗事じゃなくて戯言だ んっと? ずいぶんと長い間生きてんじゃねえの? ああ死ぬ前は時間が遅くなるってやつか。 なーるほど
こうしてる間にも電車は、もう俺から30メートルも無いところまで来ていた。 俺を眩しく照らす電車の光を見ていたら、意地汚い生への執着がまた沸いてきた。
くそっ、こんなところか。
俺の人生ここでジ・エンドかよ
まだ一冊目の最初だぞ。ここで死んだら物語が終わるぞ。
物語ってなんだよ俺。何の話だ。
もう電車は目の前じゃねえか。何でだよ。死にたくねぇよ。くっ……
「なあ」
「んっ、なんだよ俺は今、生への執着を深めて何とかここの地縛霊にでもなってやろうかと思ってんだから邪魔すんな」
「俺が助けてやろうか?」
「あの電車への恨みを募らせてる途中だ。気が散る」
「そっか、ならじゃあな」
「えっ? お前 ちょっ、待て……」
「ん、何だ?」
「た、たすけ……」
「わーってるよ」
その声の主らしき奴は、俺の真横に立っていて、ズボンのポケットに入れてた手をこっちに差し出してきた。
グッ、と俺は差し出された『救世主』ならぬ『救世手』を勢いよく掴んだ。
その瞬間、ポーーンと勢いよくそいつの後ろ側の混沌の闇のほうへと放られた。
よくある比喩表現の放られたではなく、本当に空を飛んでいた。
電車のしゃくれ顎のような先端部を何とか紙一重でかわし、綺麗に半径5mの半円を描きながら、運良く、そう、運良くあったトラックの幌に落下した。(半径5mの半円って事は、高さ5mのとこまで行ったってことだぜ)
空を飛び、高さの最高点に到達した時、俺は、俺を今のフライアウェイ状態に仕立てあげた張本人を(一瞬だけだが)見た。
なんとそいつには…………翼が生えていた。
いや、そんなわけないだろう。人間を5m投げる筋力はどうかしてるとしか、思えないが、人間に翼が生えているなんて…………
良いクッション材となってくれたトラックの幌をワンバウンドし、コンクリートの地面へと突っ伏す。
「がはっ、 な、なんなんだアイツッ」
電車が顔面の前1cmを通過しているのに微動だにしない『アイツ』を見ながら、俺は、体の奥底から湧き出たまどろみに身を持っていかれた。
もう少し楽な言い方をすると、単純に気絶した。
俺は焦った。でも体が動かない。焦る。動かない。焦る。動かない焦る動かない。
閉まる踏切を見ながら俺は、パニクッた。
列車の光が近づく、ああ、俺の存在気づいてくれねぇかな。
……無理か。 寝巻きのまんまの黒ジャージで来ちまった。
来い!! 空から蛍光塗料!!
んなわけないな。
電車が近づくにつれて、俺は逆に冷静になってきた。これはどんな心理だ?聞いたことある気もするが、調べようとしても、もう無理か。
約16年と2ヶ月生きてきた俺の命もここまでっていうとこだが最期にもうちょっと遊んでいたかったな まあ今更何を悔やんでも終わりなんだが人間最期に思う事くらいは綺麗事でもかまわんだろう とりあえずは親か 最近どっちも単身赴任でぱったりと会ってねぇが俺が死んだ時くらいは帰ってくるだろう なんか悪いな 自分たちの息子が深夜にコンビニ行った帰りに足を踏み外して電車にひかれて死にましたっつってな 笑うかな さっきからふざけた事ばっか言ってんな俺 こんなんじゃ 綺麗事じゃなくて戯言だ んっと? ずいぶんと長い間生きてんじゃねえの? ああ死ぬ前は時間が遅くなるってやつか。 なーるほど
こうしてる間にも電車は、もう俺から30メートルも無いところまで来ていた。 俺を眩しく照らす電車の光を見ていたら、意地汚い生への執着がまた沸いてきた。
くそっ、こんなところか。
俺の人生ここでジ・エンドかよ
まだ一冊目の最初だぞ。ここで死んだら物語が終わるぞ。
物語ってなんだよ俺。何の話だ。
もう電車は目の前じゃねえか。何でだよ。死にたくねぇよ。くっ……
「なあ」
「んっ、なんだよ俺は今、生への執着を深めて何とかここの地縛霊にでもなってやろうかと思ってんだから邪魔すんな」
「俺が助けてやろうか?」
「あの電車への恨みを募らせてる途中だ。気が散る」
「そっか、ならじゃあな」
「えっ? お前 ちょっ、待て……」
「ん、何だ?」
「た、たすけ……」
「わーってるよ」
その声の主らしき奴は、俺の真横に立っていて、ズボンのポケットに入れてた手をこっちに差し出してきた。
グッ、と俺は差し出された『救世主』ならぬ『救世手』を勢いよく掴んだ。
その瞬間、ポーーンと勢いよくそいつの後ろ側の混沌の闇のほうへと放られた。
よくある比喩表現の放られたではなく、本当に空を飛んでいた。
電車のしゃくれ顎のような先端部を何とか紙一重でかわし、綺麗に半径5mの半円を描きながら、運良く、そう、運良くあったトラックの幌に落下した。(半径5mの半円って事は、高さ5mのとこまで行ったってことだぜ)
空を飛び、高さの最高点に到達した時、俺は、俺を今のフライアウェイ状態に仕立てあげた張本人を(一瞬だけだが)見た。
なんとそいつには…………翼が生えていた。
いや、そんなわけないだろう。人間を5m投げる筋力はどうかしてるとしか、思えないが、人間に翼が生えているなんて…………
良いクッション材となってくれたトラックの幌をワンバウンドし、コンクリートの地面へと突っ伏す。
「がはっ、 な、なんなんだアイツッ」
電車が顔面の前1cmを通過しているのに微動だにしない『アイツ』を見ながら、俺は、体の奥底から湧き出たまどろみに身を持っていかれた。
もう少し楽な言い方をすると、単純に気絶した。