神龍と風の舞姫
森の守り神には闘う力がない

だから近くの国に守ってもらうのだ

その代り、国には時々木材や水や命を差し出す

そうやってこの世界の平衡は保たれているのだ

「そのお前が信頼を置く奴らが到着するまでいたらどうだ。どうせろくに連絡も取っていないのだろう。顔くらい見せてやっても何も減らんだろうに」

くっくと喉の奥で笑いながら羊が諭すように告げてくる

その議論はするだけ無駄だ、という様に海斗が肩をすくめる

その下で作業を終えたのか、ぞろぞろと動物たちが集まってくる

「しるふ、終わったみたいだぞ」

その様子を確認した海斗が隣に居るしるふに告げる

「オッケー」

そういうな否や、ぶわっと手に持っていた花を宙に投げる

幾本の花はしるふの操った風に乗って盛り上がった土の山の上にそっと乗っていく

たくさんの花が降り注ぐその光景は、まるで本当に空から花が降ってきたように美しかった




「信次様!!!」

バタン、と勢いよく開けられたドアの方に室内にいた信次、幸斗、小百合の驚いた視線が集中する

「なんだ、ルノア。そんなに慌てて」

なだめるように努めて冷静に信次が問う
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