神龍と風の舞姫
信次はそれが小百合であり、雪斗は友里だ

大体が妻であり、忠誠者という関係だ

「未だに海斗への婚約話は来るのか」

海斗が失踪した後も婚約話はあとが絶えない

そこまでして手に入れたいか、名誉を、地位を、権力を

「ああ、たまにな。だが、最近は海斗・ディフレンド死亡説のおかげで数がかなり減ったな」

「海斗・ディフレンド死亡説、ね」

手すりに頬杖をつき、雪斗は会場をぼんやり眺めながらつぶやいた

そんなもの微塵も信じてはいない

神龍国史上最強の力と能力を持った海斗が、そう簡単に死ぬわけがない

今、この世界に海斗を殺せるの力を持った者がいるとも思えない

ただ、心配なのが海斗のもつ”本性”のことだ

忠誠者がいなければ、本性はその人の感情の高ぶりや身に危険が迫った時などに意思とは無関係に正面に出てくる

独りでは制御できない本性は、本人が動けなくなるまで暴走し、多大な被害をもたらす

最悪の場合、その本人も死す

そうならないために”本性”を宿すものは、それを制御できる力のあるものに忠誠を誓うのだ

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