神龍と風の舞姫

波乱は風と共に

「よっと」

ふわりと大きな木の根を飛び越え、軽やかに地面に降り立つ

巨木が一層と生い茂る森の中

しるふは森の中心へ向けて進んでいた

木々たちは大きいが、光を遮ることなく成長し、幹には大木らしい苔が青々と繁茂している

ふと上を見上げれば、光を受けて輝く木の葉たちの間から差す日の光がまぶしい
ほどだ

鳥たちの声が至る所から聞こえ、ほかの動物たちの生活の音もする

森が生きている証拠だ

そんな森の声に耳を傾けつつ、しるふは軽い足取りで歩いている


ここは今いる街、セント・ランドの近くにある大きな森だ

あまりに大きすぎて普通の人なら入るのをためらうのだが、しるふはそんなことお構いなしに足を進める

たくさんの人がいてたくさんの声がして心休まらない大国よりも静かでゆっくりとできる自然の中のほうが自分は好きだ

風の声を聴き、風とともにやってくる鳥たちに語りかける

人々の尾ひれのついた噂話より、風たちの運んでくる情報のほうが信頼性を持っている

風は世界中のどこにでも吹いているからだ

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